chelmico RachelとESME MORIによるohayoumadayarou、親密なアンサンブルを響かせた記念すべき初ライブをレポート

ohayoumadayarouの初ライブ

 chelmicoのRachelと、プロデューサーのESME MORIによる新プロジェクト・ohayoumadayarouが4月23日、東京・恵比寿BATICAにて開催された『EBISU BATICA 14th Anniversary DAY7 focus』に出演。本名義での記念すべき初ライブを行った。

 ESME MORIは「Question」や「OK, Cheers!」などchelmicoの多くの楽曲を手掛けてきただけでなく、自身のソロ曲「日々」(2023年)ではRachelをシンガーとしてフィーチャー。2人はプライベートでも、長年にわたって親交を深めてきた間柄である。この日のライブは2人に加え、トラックメイカー/マルチプレイヤーのTiMTもサポートギタリストとして参加。20分という短い時間ではあったが、chelmicoの時とはまた違ったRachelの一面を垣間見せる貴重なパフォーマンスを披露した。

 期待に胸を躍らせるオーディエンスがひしめくBATICAの2ndフロア。ESME MORI、TiMTが機材のセッティングを済ませ、Rachelが「おはよー!」と大きな声で挨拶し手を振ると、フロアのあちこちから「おはよー!」の声が上がる。アンビエントなシンセサウンドに導かれ、まずは「クロール」からこの日のライブはスタート。太く柔らかなキックが心地よくリズムを刻み、その上をRachelのアンニュイなボーカルがたゆたう。シンプルかつどこか懐かしいメロディラインも、まるで耳元で囁いているような彼女の歌声も、chelmicoのそれとはまったく違う雰囲気だ。「端っこまで着いたら また戻る/あの日に」と繰り返される歌詞に身を委ねていると、蓋をしていた記憶の片隅がそっと揺り動かされるような感覚に包まれる。

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

 「どもー!」と再び元気よく挨拶するRachel。「初めまして……というか、初めて見た人しかいないよね、初ライブなんだから」と自分で自分に突っ込む彼女に、フロアはあたたかな笑いと歓声で応える。

「ありがとう、みんな優しすぎる。楽しんでいってね。今日は20分と短い間ですが、お付き合いください」

 そう言って披露したのは「玉ねぎ」。TiMTの哀愁漂うアルペジオギターの上で、「玉ねぎ切って泣いてたら ほんとに悲しくなってきちゃった」「置いてある本を踏まないように あたしを大切にしてほしい」そう切々と歌うこの曲も、繊細かつ無防備なRachelの一面を覗かせる楽曲だ。「手のひらを舞うハンバーグ 何も知らずに/美味い美味いと食べなさい」と続くサビの歌詞は、まるで映画のワンシーンを見ているかのよう。悲しみの中にユーモアが、孤独の中に小さな温もりがそっと顔を覗かせるRachelらしい楽曲だ。

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

 ここでメンバー紹介をするRachel。そのたびにフロアから「おはよー!」の声が上がるなど、デビューライブにしてすでにオーディエンスとの息もぴったりだ。「こんな素敵なメンバーがいて、そしてみんながいて、こうして歌わせてもらってます」と言い、BATICAの14周年にお祝いの言葉を添えた後は「西澄寺」。TiMTのミュートカッティングに導かれ、タイトなリズムの上でRachelがラップする。ストイックなまでに音数を絞り込んだラップセクションと、ESME MORIのエレピが彩る浮遊感たっぷりのメロディセクションを交互に行き来しつつ、フロアを少しずつ温めていく。

 「いい曲!」「かっこいい!」と口々に叫ぶオーディエンスに、「ありがとう。今日のために頑張って作った甲斐があったよ」とRachel。実はchelmicoにとっての初の企画イベント『白ギャル祭り』を、2015年9月に開催したのもここBATICAであったこと、その縁もあって今回の周年イベントへの出演も決まったことなどを明かす。

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

 「『白ギャル祭り』の時も、chelmicoはまだ持ち曲が3曲くらいしかなかったのに企画イベントを任せてくれたし、そんなBATICAの懐の『太さ』をみんな覚えて帰ってね。懐の『深さ』じゃなくて『太さ』だから!」と、言い間違いを無理やり(?)押し通し笑いをとった後は、この日リリースされたばかりのデビュー曲「mo osoi」。切なくも質素感あふれるトラックと、コーラスのかかったニューウェイブなギター、そしてRachelの少し調子外れな歌い方がUSインディ~オルタナティブの空気をまとい、どこまでもパーソナルで、どこまでも彼女らしい色を放っていた。

ohayoumadayarouライブ写真(撮影=Tats Nakahara)

 そして最後は「紙飛行機」。ビット数を落としたチープでノイジーなシンセと、ファルセットを交えたRachelの優しく温かい歌声が鮮やかなコントラストを描く。中盤、たおやかなフロウのラップを挟んでノイジーなクライマックスを迎えるこのドラマティックな楽曲で、この日のライブに幕を下ろした。

 Rachelのパーソナルな一面に焦点を当てた楽曲と、3人による親密なアンサンブル。そして、オーディエンスとの確かな絆。全5曲20分と短いパフォーマンスだったが、ohayoumadayarouの魅力がぎゅっと凝縮された初ライブだった。なお、リアルサウンドでは近日RachelとESME MORIのインタビューを公開する予定だ。

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