BMSGは日本の音楽業界を成長させていく SKY-HIが語った5つの構想、『Greeting & Gathering '25』レポート

SKY-HI(日高光啓)が代表取締役CEOを務める株式会社BMSGが、ビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering '25』を開催した。設立5周年を迎えるBMSGが2024年から2025年にかけて注力する5つの成長領域「GROWTH5」(グロース)について、 SKY-HIがプレゼンテーションを行った。
まずSKY-HIは、自身が行動し続ける理由として「才能を殺さないために。」という言葉をあらためて確認。昨年は会社の頭文字を取った「“B”ASE」「“M”ASS APPEAL」「“S”USTAINABLE」「“G”ROWING」という4つのテーマだったが、今年は「“G”ROWING」に絞って話を展開していった。

今年9月でBMSGは5周年を迎える。「いちばん成長したのはBMSGなんじゃないか」ということで、“S”を“5”に変えた5周年ロゴも用意し、大きくお祝いしていくのだそう。そんなBMSGが掲げたのは「GROWTH5」というワード。ここには「BMSGの音楽を成長させる×音楽業界そのものを成長させる」という意図が込められている。SKY-HIは「BMSGの独占状態を作りたいわけじゃない。みんなでビルドアップして世界に羽ばたいていきたい、そういった市場を作っていきたい」と続けていた。
①育成プログラムとその集大成『3rd BOYS GROUP AUDITION PROJECT「THE LAST PIECE」』
②『No No Girls』が社会に与えたインパクトとHANAの成長
③自社レーベル・Bullmoose Recordsの方針と新体制
④BMSGが考えるファンコミュニティとの関係性(ファンクラブ/オンラインサロンの哲学)
⑤「Less Waste, More Music.」――設立5周年へ向けた社会的な取り組み

まずは、「GROWTH1」として掲げた新オーディション『THE LAST PIECE』について。同オーディションは、BMSGの育成プログラムの集大成。というのも、BMSGの育成を思春期ど真ん中に受けたBMSG TRAINEEのRUI、TAIKI、KANONが参加するためだ。あらためて「SYSTEMATICではなく、DIALOGIC」「AMATEURではなく、PREPARES」「AIではなく、HUMANENESS」というBMSGの育成制度をおさらい。この3つを完璧に学んだTRAINEEがRUI、TAIKI、KANONというわけだ。3人が主演を務めるドラマ『ゲート・オン・ザ・ホライズン〜GOTH〜』(FOD)を制作した理由も、「3人を音楽活動以外でもパッケージングしたいと思った」と語っていた。
そして、この3人は自ら志願して『THE LAST PIECE』を2次審査から受けているそう。出演者全員が10代という同オーディションを開催する背景として、SKY-HIは「ドラマ『IWGP』(『池袋ウエストゲートパーク』/TBS系)の頃、若者の街と言えば池袋。自分が思春期の頃、若者の街と言えば渋谷でした。そこで学んだ音楽やカルチャーが自分の青春を作ってくれたと言っても過言ではないです」「今10代の彼らに、『今若者の街ってどこなの?』と聞いたら、こう答えるんです――『ないです』」「現実問題として、少子高齢化でただでさえ人口が減っている10代の幸福度が(日本は)世界で有数の低さ。および、10代の自殺率の向上もアーティストが少し責任を感じなくてはいけないという意識もあります。音楽家は老若男女問わずに多くの人の人生にリーチすることができて、夢の見方を教えるのはアーティストの仕事だと思ったりもしています」と語った。そんな思いを込め、「すべての10代と、かつて10代だった、すべての人へ。」というコピーとともに同オーディションはスタートする。また、これまでのオーディションと同じくYouTubeで配信しながら、『THE TIME,』(TBS系)が密着し、6月末から放送されることも発表された。
「GROWTH2」は、『No No Girls』とHANAについて。最終審査『No No Girls THE FINAL』はYouTubeライブで同時視聴者数56万人を記録したこと、そこで結成されたHANAがプレデビュー曲「Drop」でSpotifyの月間リスナー数が100万人を突破したこと、デビュー曲「ROSE」はBillboard JAPAN総合ソング・チャート「JAPAN Hot 100」で首位を獲得したことなどを振り返る。彼女たちはBMSG傘下のプロダクション・B-RAVE所属だが、SKY-HIは「HANAはBMSGの大切な仲間である」とここで宣言。そして、事務所として「一過性のトレンドではなく人間的成長をしっかりサポートしていく」とも話していた。

「GROWTH3」は、BMSGの自社レーベル・Bullmoose Recordsについて。「オルタナティブな視点で可能性を見つけ、その可能性を大きく、柔軟に、育てていくレーベル」という意味を持たせた新しいスローガン「Stay Alternative」を発表すると、それに基づいた取り組みのひとつとして“FlexDeal”というオーダメイド型の契約を確立したことを報告する。さらに、この「FlexDeal」で新たに契約したアーティストとしてBANVOX、そしてSKY-HIと旧知の仲のSALUの名前が挙がる。また、Bullmoose Recordsのゼネラルプロデューサーとしてクリエイティブチーム・INIMIの代表であるSunnyが就任したことも発表され、Bullmoose Recordsのさらなる成長を予感させた。
「GROWTH4」は、ファンコミュニティアプリ「B with U」およびオンラインサロン「B-Town」について。ファンアプリとオンラインサロンという2つの軸でファンとの関係性を成長させ、新しい在り方を提示していくというものだ。「B with U」は、昨年フルスクラッチ開発で誕生したファンプラットフォーム。コンテンツの確認やデジタル会員証、チェックイン機能、グッズの購入などファンにとって必要なことがすべてできるというものだ。さらにSKY-HIは、「SNSが広がりすぎて、タッチポイントが分散しすぎている」としたうえで、「やっぱりね、X(旧Twitter)は人の身体に悪い(笑)。文字面でのコミュニケーションに集約されるので、それがたとえ応援している方の愛のある言葉でも、時には応援の言葉ですら煽っているような感じがしてしまう。アーティストはすべて等しく、おしなべてファンにとても感謝していると思うんです。アーティストは聴いてくれる人がいて初めてアーティストになれますから。それなのに、ファン自体が怖くなってしまったりしてしまう。そういうことを防ぎたい、『B with U』で健全なファンとのコミュニケーションを促進できたらな、と」と続けていた。さらに、学びと共創が生まれる場として、「B-Town」についても今後もっと活性化していきたいとも語っていた。
「GROWTH5」は、「Less Waste, More Music.」という言葉とともに、BMSGが社会に向けて行っている取り組みについて。昨年4月にリリースされたBE:FIRSTのコンセプトシングル『Masterplan』では紙ジャケットを採用し、店舗特典は共通という形をとった。結果、CDの売上は40%減少したが、全売上は2倍に伸びたという。そのおかげでアーティストへの還元も増え、BE:FIRSTのワールドツアーや『No No Girls』、『THE LAST PIECE』の開催ができるとも語られた。語られる言葉の節々には、「音楽業界の未来を成長させる」という意志が感じられた。さらに新たな取り組みとして、廃棄予定のグッズの布を使った花を作るなどの取り組みをメインにした新ブランド「Goodie Goodie」もスタートすることになる。
