『続・続・最後から二番目の恋』は月9の救世主に? 脚本家・岡田惠和の“本領発揮”の予感

『最後から二番目の恋』は月9の救世主に?

 2025年4月期のフジテレビ「月9」枠にて、岡田惠和脚本作『続・続・最後から二番目の恋』が放送されることが発表された。

 『続・続・最後から二番目の恋』はタイトルのとおり、“3作目”となるシリーズ作品。2012年1月に第1期の連続ドラマ『最後から二番目の恋』として放送され、スペシャル版の『最後から二番目の恋2012秋』、第2期の『続・最後から二番目の恋』と放送された人気シリーズだ。

 脚本の岡田、メインキャストの小泉今日子、中井貴一、坂口憲二、内田有紀、飯島直子も全員続投。前作から11年の月日を経ているにもかかわらず、なぜ再び本作の企画が動き出したのだろうか。2012年の第1期『最後から二番目の恋』を視聴していたライターの木俣冬氏は、当時の反響を次のように振り返る。

「『最後から二番目の恋』が放送された2012年は、東日本大震災の翌年ということもあり、視聴者が憧れを抱くような“ザ・テレビドラマ”といったお話よりも、地に足の着いた現実と地続きの物語が求められていたような記憶があります。『最後から二番目の恋』は、主人公が45歳の独身女性と50歳の独身男性。当時、恋愛ドラマの多くが20代〜30代の主人公を描く中で、職場では上の立場になり、人生の後半に差し掛かった人物を主人公に据えた本作は異彩を放っていました。どうやって人生を楽しんでいくかというよりも、どうやって人生を終えるかの方に重点が置かれていた。とはいえ、まだ舞台から降りたくないし、恋だってもうワンチャンあってもいいかもしれないという複雑な心情が主人公ふたりに漂っていました。そして、それが他人事ではなく、自分事として多くの視聴者に支持されていました。だからこそ、SPドラマ、第2期と制作されたのだと思います。ただ、第2期が観ていて照れくささもありつつ、非常に美しい終わり方だったこと、あれから11年も経っていることからも今回の続編発表には驚きました」

 毎年新世代の俳優が次々と登場し、かつて主演を務めていた役者も親役や上司役などサブに回るようになるのが役者の世界。入れ替わりが激しいこの世界の中で、デビューから第一線に立ち続けているのが本作の主演を務める中井貴一と小泉今日子だ。木俣氏は今回の続編も二人の存在があったからこそだと続ける。

「脚本の岡田惠和さんは自身が過去に脚本を手がけた『南くんの恋人』(1994年/テレビ朝日系)をまた違う形で『南くんが恋人!?』(2024年/テレビ朝日系)として手がけたように、同じ題材を違う設定や別の役者で作り直すパターンを期待する視聴者もいるかもしれません。が、岡田さんは、『ひよっこ』(NHK総合)もそうだったようにできれば『北の国から』(フジテレビ系)方式でオリジナルキャラの人生を続けたい作家です。一緒にやった俳優を大事にされます。だから今回、キャストも同じ、前作からそのまま11年経過した物語を望まれたのではないでしょうか。そして、本作を作ることができたのは、小泉さん、中井さんが第一線で活躍し続けているからこそです。特に小泉さんは、『団地のふたり』(2024年/NHK BS)も大評判だったように、現在の年齢だからこその自然体な姿が多くの支持を集めています。リアルタイムでその活躍を観てきた世代だけではなく、10代〜20代からも“レジェンド”として人気がある。中井貴一さんは、終了が惜しまれる『サラメシ!』(NHK総合)や時代劇『雲霧仁左衛門』(NHK BS)でご活躍されています。共演の内田有紀さん、坂口憲二さん、飯島直子さんも、皆さん年齢を重ねながら若い頃とはまた違った魅力を放っています。これまで、テレビドラマは『F1層(20歳から34歳の女性)を狙うべき』といった言説がありましたが、『F2層(35歳から49歳の女性)』を中心にヒットしたのが、『最後から二番目の恋』でした。そのときの視聴者の方が、役者陣と一緒に年齢を重ねて、『F3層(50歳以上の女性)』となった。いまだにドラマのターゲットは『F1層』とされている印象がありますが、エンタメが多様化している現在、ドラマ熱が一番高いのは『F3層』の可能性があります。その点において、フジテレビが本作をかつての木曜劇場(木曜日22時枠)ではなく、『月9』として放送するのも大きな意味を感じます。テレビドラマの王様とも言える枠だった『月9』が時代とともに少しずつ路線を変更し、近年は若年層を意識したさまざまな挑戦を行っている印象がありました。そこから今回の明確な路線変更は、もしかすると『月9』に大きな革命も起こすかもしれません」

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