木谷高明が語るブシロード20周年&IPビジネスの展望 「自社のIPが好きな人を採るべき」

ブシロード木谷高明が語るIPビジネスの展望

 トレーディングカードゲーム『カードファイト!! ヴァンガード』や次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!』など、多様なメディアミックスプロジェクトを手掛けているブシロード。『BanG Dream!』は2025年で10周年を迎えるなか、MyGO!!!!!やAve Mujicaといったユニークなガールズバンドを続々ヒットさせ続けている。

 グローバルなヒットコンテンツを生み出す中で、『ヴァンガード』をはじめとしたカードゲーム事業にはまだまだポテンシャルが秘められているという。ブシロード代表取締役社長・木谷高明は現在のエンタメ産業、そして20周年を控えたブシロード自身について何を思うのか。心境を語った。

2025年の『BanG Dream!』の躍進

—— 最初に、直近のTVアニメシリーズが大好評だった『BanG Dream!』についてお伺いできればと思います。木谷さんは現在同シリーズの制作から離れていらっしゃいますが、とくに近年のMyGO!!!!!、Ave Mujicaの展開はどう感じていましたか?

木谷高明(以下、木谷): それはもう成功と言っていいんじゃないですかね。ある意味「こういう方法しかなかったのかな」という気もしますが。10年もひとつの作品を続けるのは大変ですが、MyGO!!!!!とAve Mujicaは海外でも伸びました。中華圏の取引先によく言われていたのは、女性キャラ同士のギスギスした関係が、「後宮もの」に似ていてウケたというんですね。『BanG Dream!』はここにきて、やはりさらに飛躍できるのではないかなと感じました。リアルライブができるバンドがもう7つもあって、毎月のようにライブを開催できますから、これは大きいです。

—— 木谷さんが『BanG Dream!』プロジェクトから離れたのにはどのような経緯があったのでしょうか?

木谷: 音楽はやはり若い人が中心になって作っていく文化だなと思って、「まぁ、年寄りが出る幕じゃないな」と感じたんです。私は2025年6月にはもう65歳になりますし……。普通に考えればもう定年なんです。なのでコンテンツなり仕事なりは少しずつ若者に振っていっています。もっともカードゲーム事業はブシロードの売上の半分を占めているのでまだ私がみていますが、これも徐々に手放していくつもりではあります。

—— ここ数年はまさに『BanG Dream!』の功績もあって「ガールズバンドもの」は改めてブームになっています。木谷さんとしてはどう思いますか?

木谷: 良いところも悪いところもありますが……まずビジネス面から言いますと、たとえば学園を舞台にしたとして、欧米などには「セーラー服」みたいな文化がないですよね。だから学園を舞台にした場合、アジアはいいとして欧米には広がりにくい部分があります。逆にメリットは、やはりアニメの制作期間に音楽ライブ中心にプロジェクト展開できることです。いまや一つのアニメを作るのに3年くらいかかるのも当たり前ですから、一度ヒットした後ライブ興行で繋げるわけですね。なんだかんだこれは大きいです。1万人のライブ参加者の前でアニメ続編を発表すればその1万人が一緒に喜べるわけで、このパワーは大きい。まとめると、今の時代や文化を考えると海外に売りにくい部分があるにはありますが、アニメの制作期間のはざまをうまく繋げることが可能という、まさに『BanG Dream!』が確立したモデルは大きいです。7バンドがリアルで活動しているので、お客さんは退屈しません。

—— アジア圏以外の海外展開を強化することについてはどのように考えていますか?

木谷:広告を打ったり英語のSNSアカウントを作ったり、いろいろアプローチはしていたんですが、なかなか難しいです。Ave Mujicaがメタルバンドだからチャンスはあったと思うんですが、やはり実際に海外でライブをやらなければダメでしょうね。ライブから火をつけるのが一番いいと思います。中国なら1万人規模で開催できるわけですから、アメリカとかでも2,000人規模くらいはやりたいです。

——Ave Mujicaがバンドとしてグローバルに評価されるポテンシャルは十分すぎるほどにあると思います。

木谷:Ave Mujicaの実力はかなり高い。これは、グローバルに評価される要因になると思います。

——『BanG Dream!』は次々と実演バンドを創り出していますよね。

木谷: 世界で一番ガールズバンドを生み出している会社だと言われていますから。

——バンド運営をここまで継続できた秘訣はどこにあるとお考えですか?

木谷: 最初に企画を立ち上げたときは「絶対無理だからやめたほうがいい」と言われていました。結局、音楽のことを知っていれば知っているほど、声優さんが実際に演奏するというのは難易度が高すぎると思われるんです。当時は楽器を弾ける声優さんも少なかった。逆にミュージシャンに声優をやってもらうという発想もない。ただ、「専門家から無理だと思われること」だったからこそ、うまくいったんだと思います。何かを大ヒットさせるには、誰もが無理だと思うハードルを越えなきゃダメなんです。

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