堺正章と成田昭次&寺岡呼人(Rockon Social Club)が語る『プンスカピン!』での奇跡的なコラボ 両者を繋ぐバンドマンシップ

堺正章 & RSCインタビュー

 これは時空を超えた、バンドマン同士の愛と絆の物語。2023年の活動開始から、大人の華やかなロックを奏で続けるRockon Social Clubと、1960年代にザ・スパイダースのボーカルとして世に出たのち、国民的エンタテイナーの道を歩む堺正章。二組の奇跡のコラボ、それが3月14日にリリースされるミニアルバム『プンスカピン!』だ。

 ミニアルバムにはすでにSNSでヒット中の「プンスカピン!」と、「The Show Man」の新曲2曲に加え、ザ・スパイダースと堺正章の往年のヒット「あの時君は若かった」「さらば恋人」の新録音も収録。「プンスカピン!」にはオルガンにミッキー吉野、「The Show Man」にはサックスで渡辺貞夫が参加して、7人の熱演に花を添える。

 奇跡のコラボはいかにして実現したのか? 7人でのライブ初披露となった昨年12月25日の横浜BUNTAI(『KURE Presents NARITA THOMAS SIMPSON BIG BAND BEAT CHRISTMAS FANTASY』のステージのサプライズゲストとして、堺正章 & Rockon Social Clubとして登場)でのライブ、新曲制作の内幕、そして両者を繋ぐ内なるバンドマンシップについてなど、様々な話題を堺正章、成田昭次、寺岡呼人にたっぷりと語ってもらった。(宮本英夫)

堺正章、Rockon Social Clubとのコラボは青天の霹靂だった?

――アーティスト写真がめちゃめちゃかっこいいですね。しかもメンバーが7人というところで、「あっ!」と思いました。

堺:そう、スパイダースが7人でしたね。ファッションも、ちょっと60年代を意識したようなものを着ていますから、古巣に帰ったような気がします(笑)。この時代を知ってらっしゃる方がどれぐらいいるかわからないけど、まさにこの赤のミリタリージャケットを着て、7人が力を合わせて前進していたあの頃を、自分の中で蘇らせたような気がします。

――とても素敵です。当時を知る方は嬉しいでしょうし、知らない方は新鮮でしょうし。

堺:ちょっと、照れもありましたけどね。でもみなさんと着れば、勇ましい群像になっていて、いいなと思いますよ。

寺岡:撮影の時は横並びだったので、誰がどういう感じかわからなかったんですけど、やっぱり堺さんの醸し出すムードというか、パワーがすごいなと感じました。

堺:ステージ(昨年12月25日の横浜BUNTAI)をやりましたのでね。ステージをやった時に初めて、これを着ている効果がすごく増大したというか、大体、今はまったく同じものを着てやるグループなんて少ないでしょう?

寺岡:少ないですね。

堺:だから僕らにとっては伝統的で、若い方には新鮮だったんじゃないでしょうか。

成田:グループで揃いの衣装って、着たことなかったんですよ。しかもそこに堺さんがいるだけで、より素敵に見えるんですよね。

堺:抵抗はありましたか。正直に言ってください(笑)。

成田:全然抵抗はなかったです。むしろ、みんなで同じ衣装が着れて嬉しかったです。なかなかないですから、こういう機会は。

堺:今は、それぞれの個性をステージの上で発揮する時代ですからね。それに伴ってファッションも、自分の主張を表現するのは普通ですけど、こうやって一丸となるというか、パッと衣装に着替えるとそのメンバーの一員になれるっていう、そういう魔力がユニフォームというものにはありますね。

寺岡:横浜BUNTAIでやった映像を見ると、すごいインパクトがありました。

成田:団結力が湧いてきますね。

堺正章 ©︎TOKYO RECORDS
堺正章
成田昭次 ©︎TOKYO RECORDS
成田昭次
寺岡呼人 ©︎TOKYO RECORDS
寺岡呼人

――さあ、では、どうやってこのプロジェクトがスタートしたのか。寺岡さん、語ってもらえますか。

寺岡:去年の8月の終わりだったと思うんですが、堺さんを含めた方々とお食事する機会がありまして。堺さんは、ご自身の結成したバンド(堺正章 to MAGNETS)の相談で来ていたんですけど、そこで「もう一個、僕らとバンドをやりましょうよ」という話になって、最初の相談内容と全然違うことになってしまったのがきっかけです(笑)。

堺:そうなんですよ(笑)。僕にとっては青天の霹靂みたいなもので、「いやー、僕にできるかな」と思ったんですけど、みなさんと話をして、「そういう体験を、この歳でまたやらせてもらえるのはすごく面白いかもしれない」と。僕にエネルギーさえあれば、そこに立ち向かっていけるだろうと思って、「やらせていただきます」ということになりました。

――そんな経緯でしたか。なるほど。

堺:MAGNETSとは違って、こちらはすでに形が出来上がっているところに僕が入っていくわけですから、これはこれですごく面白いんですね。横浜BUNTAIのライブでも、非常に面白い体験をさせてもらったという気持ちがあって、あれだけ大勢の方の中で自分を表現できることの喜びを感じました。Rockon Social Clubのみなさんは慣れてると思いますけど、僕にとってはあれだけの方たちの前で歌うということ自体が大変なことなので、すごくいい体験をさせてもらいましたね。

堺正章がRockon Social Clubと共演して感じた“個”の魅力

――その、横浜BUNTAIでのサプライズ出演で、7人で初披露した新曲が「プンスカピン!」でした。作詞作曲は寺岡さん。

寺岡:とにかく楽曲を作らないと始まらないなと思ったので、Rockon Social Clubのツアーが9月13日に終わったあと、9月中には「プンスカピン!」を含めて2曲作りました。そこに堺さんに仮歌を入れていただいて、この形で進めていけるかどうかも含めて、曲がないと進まなかったんですよね。昭次くんはどうだった? 初めて聴いた時。

成田:もうびっくりというか、メンバー全員正座して聴くレベルでした。

堺:いやいやいや(笑)。この「プンスカピン!」という曲は、Rockon Social Clubにしてみると、ちょっと異色な曲だと思うんですよ。

寺岡:そうですね。

堺:「狙っちゃうぞ」っていう曲ですね(笑)。それを寺岡さんが、すごくうまく作ってくれて、「プンスカピン!」という信号を、みんながどう使ってくれるか? っていうことも、面白い視点の一つですよね。

寺岡:和也くんや健一くんは、たぶん昔だったら、「踊るだけの曲なんてやりたくねえ」って言うタイプだったと思うんですけど、みんな年齢を重ねて、もう何でも挑戦しますよみたいな感じになって、そこがまたかっこよさになっていて。3人がフロントで踊ってる感じが、めちゃくちゃかっこいいなって思いましたね。

――「プンスカピン!」のダンスの振付は、SNSで人気のクリエイター・MIOCHINさん。楽曲のテーマやコンセプトは、やはり60年代のGS(グループサウンズ)がお手本ですか。

寺岡:そうですね。でもグループサウンズをそのままやるんじゃなくて、グループサウンズ・テイストなんだけど、僕らがやっても違和感なく、聴いた人も「懐かしけど新しいな」みたいな感じになってほしいという気持ちで作りました。

堺:うまく作ってくれてますよ。懐かしさもありつつ「今だよね」という感じがすごくするので。今、YouTubeでもたくさんの方が聴いてくださっているということですけど、僕らの世代の人たちに「元気をもらえるね」と思ってもらえたら、すごく嬉しいなと僕は思ってますし。それだけじゃなく、全世代に違和感なく聴いてもらえる曲だと思うんですよ。ターゲットを決めて、この層だけでいいよということではなくて、そういうものを取っ払って届くような破壊力が、この曲にはあるんじゃないかな。

寺岡:この曲は、ミッキー吉野さんがオルガンを弾いてくれてるんですよ。これがまた最高にかっこよくて。

堺:僕はイントロのギターが好き。あれは寺岡さんが作ったの?

寺岡:そうです。ライブでは昭次くんが弾いてます。あのギターリフは、堺さんと最初にお会いした時に、堺さんの好きな音楽のお話をうかがって、キンクスとかスモール・フェイセスとか、ああいう60年代初期のブリティッシュロックの感じがいいなと思って、考えましたね。

堺:あれがすごく耳につきますね。

――「バン・バン・バン」(ザ・スパイダース)の雰囲気も、かなり入っている気がします。

堺:あー! 「バン・バン・バン」は、かまやつ(ひろし)さんの世界で、彼のエキスがものすごく入ってる曲ですね。間奏で踊ったりするのも、あの頃は若かったから相当踊れたんで、自分たちが頑張っている姿を体で表現した部分があったりして。かまやつさんと僕で「こんな踊りがいいんじゃない?」と考えてやったんですけど、今考えてみると、あの頃としてはすごく画期的で、頑張って表現してたなと感じますよね。

――「プンスカピン!」も負けてないと思います。言葉のインパクトは。

寺岡:共作詞の西野蒟蒻さんに、タイトルを50個くらい考えてもらったんですよ。そこから一番歌になりそうな言葉を選んだんですが、言われたように、コンセプトは「バン・バン・バン」とか「フリフリ」みたいな、言葉の遊びができたらいいなということでしたね。

堺:僕がみなさんのステージを見ていて思うのは、成田くんは一番真面目というか、笑顔の少ない人なんですよ。でもそれがすごくいいんですね。それぞれの個性って、そういうことなんだと思うし、だから「プンスカピン!」を真剣に真面目に歌ってる姿というのが、成田くんらしいなという感じがしますね。逆にそういう存在があるから、岡本くんや高橋くんがはじけられるという、Rockon Social Clubにはちゃんと個性配置というものが出来上がっている感じがしましたよ。

成田:でも僕、ライブで「プンスカピン!」を初披露した時に、歌に入るのを忘れて……2回歌ってるんです。そういうハプニングもありました。

寺岡:あのままスルーしてもよかったのに、堺さんがちゃんと拾ってくれて、「僕の顔に泥を塗ってくれましたね」みたいなことを言って(笑)。

堺:あははは!

寺岡:それでまた、お客さんに一体感が出て。

堺:普段のRockon Social Clubとは、またちょっと異なる空気感があったかなと思うし、僕もすごく幸せにその時間を過ごせましたね。みんなが支えてくれたし、僕もみなさんを多少なりとも引っ張っていけた部分があって、すごくいいコンビネーションを組むことができたという感じでした。ただ「もう一回歌おうか」って言った時には、さすがに同じ曲を続けて2回歌うっていうのは、ご法度だろうなとは思ったんですけど(笑)。

寺岡:ところが、ミュージックビデオの撮影をしていたので、撮れ高が良かったんです。結果的に(笑)。

堺正章&Rockon Social Club「プンスカピン!」Music Video

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