10-FEET、3人らしさ全開のまま遂げたソリッドな進化 未発表曲披露で大いに沸いた『helm'N bass』ワンマン

10-FEET『helm'N bass』ワンマンレポ

 「あぁ、これぞ10-FEETのワンマンだなあ」と何度しみじみ思ったことか。『10-FEET "helm'N bass" ONE-MAN TOUR 2024-2025』、5月13日のZepp Haneda (TOKYO)公演でのことだ。本来は昨年末に行われるはずだった本公演だが、KOUICHI(Dr/Cho)の療養により半年ほど延期に。今年1月末のライブ活動再開を経て、東京での久々のワンマンとなった。やはり、3人の個性の掛け合わせや阿吽の呼吸があって、初めてあの“10-FEET”を観ることができるのだーーこの空間でしか得られないかけがえのないものを再認識したライブとなった。

 思えば『第74回NHK紅白歌合戦』出場やアリーナワンマン公演など、初めて尽くしなことも多かった近年の10-FFET。そんな中で昨年生まれたシングルが『helm'N bass』だ。「新しい曲を作っていく上で、それがライブのセットリストで『RIVER』とか『CHERRY BLOSSOM』とか『VIBES BY VIBES』とか『その向こうへ』とか『蜃気楼』とかを押しのけるほど必要になってくる曲なのかって考えた時に、絶対にそうなる曲を作らなあかんと思うんですよね」(※)と、以前TAKUMA(Vo/Gt)は語ってくれたが、昨年から何度か観てきたフェスのステージも含めて、『helm'N bass』の楽曲はセットリストの中でまばゆく輝いている……というより「helm'N bass」や「gg燦然」があることでライブ自体が鋭く、カッコいいものへと進化している気がする。そう実感させてくれたのが今回のワンマンでもあった。

TAKUMA

 「火とリズム」から幕を開けたこの日。あの空を割くようなギターイントロとどっしりしたリズム隊が象徴するように、疾走感だけでなく“重さ”でしっかり聴かせていくのが、まず今回のモードだったように思う。早くも2曲目に「VIBES BY VIBES」を、その後も「1sec.」や「STONE COLD BREAK」などグルーヴでグイグイ引っ張っていくミクスチャーアンセムを間髪入れずに叩き込む。とりわけ、シーケンスやブレイクビーツを大胆に交えた「ハローフィクサー」、そしてそのスタイルを昇華させた「gg燦然」への流れには、DJの繋ぎのような没入感があった。だが、それを“外しの変化球”としてではなく、あくまで“真っ向勝負のストレート”として放っていたことに、ミクスチャーバンドとしての新鮮かつピュアな側面が増強されているのではないかと感じた。

KOUICHI

 そんなモードは、歪みのミクスチャースタイルを確立した名盤『REALIFE』収録の2曲、「2%」と「nil?」が前半の盛り上げ役を買って出ていたことにも通ずる。「古すぎて新曲くらい盛り上がらへん曲をやります!」というTAKUMAらしいMCでむしろしっかり盛り上げた「nil?」では、重心低めに構えたイントロにラップ調の歌唱、ラウドロックばりに爆裂する間奏から開けたサビへのギャップで、ガンガンにオーディエンスをアジテート。それでいて、KOUICHIの一打のパワーが強まり、NAOKI(Ba/Cho)もぐるぐると回りながら演奏するアウトロの開放感は抜群に気持ちいい。一方の「2%」はライブ定番曲だが、こうした流れで聴いたこともあってか、いつも以上にイントロから重くどっしりとのしかかってくる感じが最高だった。

NAOKI

 そして、満を持してのタイミングでぶち込まれたのが「helm'N bass」だ。レゲエ調のイントロを経て、TAKUMAのギターと祈りのような歌唱が絡み合って楽曲を勢いづけていくが、ライブハウスで聴くと、地を這うようなNAOKIのベースラインと鋭い切れ味を連発していくKOUICHIのドラミングがグッと刺さる。ほんのりとシーケンスを入れ込んでいたり、レゲエの取り入れ方が斬新だったりするが、案外シンプルに3ピースバンドとしての地力や歌心が響いてくる曲でもある。「gg燦然」が“ストレートな10-FEET”をどう新しく聴かせるかという曲だったならば、「helm'N bass」はむしろ“ストレートなロック”を今の10-FEETにどう取り込むかという挑戦だったのかもしれない。そんな「helm'N bass」を経て、後半戦に入ったライブはさらなる彩りを見せていく。

 矢継ぎ早に12曲を演奏してきたところで小休止。MCパートではフロアから「KOUICHIおかえり!」のコールが飛び交う。「もう大丈夫や。お前ら……あんまり俺のことナメるなよ!」とKOUICHIらしく笑いを交えてアンサー。「あっという間に終わっちまうから精一杯楽しめよ!」という喜びを噛み締めるような一言には、大きな歓声と拍手が贈られた。温かい空気に包まれたところで、TAKUMAのアカペラから名曲「アンテナラスト」へ。一度は3人での演奏が叶わなくなったところから、こうして再び揃ってステージに立つことができた今、〈あまりあなたに会わなくなって つまらぬ男になりました〉という歌詞がなんだか沁みてくる。続く「太陽4号」も同様だが、TAKUMA自身のパーソナルな出来事が発端となって生まれた曲たちが、この日はバンドのストーリーとリンクして新しい輝きを放っていた。自身に語りかけるように、そしてバンドの未来に想いを馳せるように歌うTAKUMAの歌に、思わず涙腺が緩む。これぞ、10-FEETのワンマンだ。

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