Billboard JAPANチャートの“リカレントルール”とは? 適用後のメリット・デメリットを考える

日本を代表する音楽チャートの一つ、Billboard JAPANが総合ソングチャート「JAPAN Hot 100」および総合アルバムチャート「Hot Albums」に“リカレントルール”を導入することを発表した。
今回導入されるリカレントルールでは、日本独自のマーケットバランスを考慮し、「JAPAN Hot 100」に通算52週チャートインした楽曲、「Hot Albums」に通算26週チャートインした楽曲については、ストリーミングポイントが一定の割合で減算されるという。
ストリーミング時代ならではのルール
この“リカレントルール”という言葉、聞き慣れない方も多いのではないだろうか。
Billboard JAPANの主要チャートにはソングチャート、アルバムチャート、そして双方を合算したトップアーティストチャートがある。いずれも複数の指標で構成され、フィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング指標がソング/アルバムの双方、ラジオ、動画再生およびカラオケがソングチャートのみの対象となり、各指標の影響力などを加味してウエイト付けされ、ポイントが算出されている。
そのうち、最も重要な存在となるのがストリーミングだ。Billboard JAPANのCHART insightをみると、ソングチャートではロングヒット曲における本指標の割合が過半数を占めていることが分かる(※1)。アルバムチャートにおいては昨年最終週からストリーミング指標が加わっているが、導入以降はよく聴かれる作品が総合チャートで上昇し安定(※2)。ストリーミングの存在感は双方のチャートで高まっていた。
他方、ストリーミングの重要度が高まることで、チャートが膠着状態になっていることは否定できない。たとえば5月28日公開分のBillboard JAPANソングチャートにおいて100位以内に52週以上ランクインしているのは30曲、アルバムチャートにおいては50位以内に26週以上入っているのは34作品あり、いずれもストリーミング人気が高いものばかり。一部のアーティストによる寡占状態と形容する声も聞こえていた。
Billboard JAPANは、その膠着状態からの脱却を目的として新ルールを導入したと思われるが、このリカレントルールはすでに米Billboardで導入されている。
米Billboardソングチャートでは、一定週数以上ランクインしている曲が一定順位を下回った際にチャートから外れるというルールを適用。21週以上在籍の場合は50位未満、53週以上の場合は25位未満に後退した際に適用される。これはチャートの新陳代謝を目的とするものだ。
ただこのルールに問題がないわけではない。米では強力なアルバムが初登場した際に収録曲がソングチャートにも大挙登場することが多く、そのランクインにより押し出された曲にリカレントルールが適用されることが少なくない。ただ、アルバム収録曲の大半は初登場の翌週以降大きく後退するため、一時的なダウンでチャートから外れること、そしてそもそもチャートから外すというルールに懸念が抱かれていた。
一方でこの懸念は、Billboard JAPANにおいては払拭されたといえる。Billboard JAPANではあくまでストリーミングの減算処理にとどめ、チャート自体から除外するというわけではないからだ。
実はこの減算処理という方法は、フィジカルセールス指標ではすでに導入されている。Billboard JAPANでは2010年代後半に入り、一定枚数以上の週間セールスに対し減算処理を行う(1枚当たりの獲得ポイントを抑える)措置を導入したことで、デジタルヒットが可視化されるようになった(※3)。Billboard JAPANが今回のストリーミング指標における減算処理を“リカレント(循環・繰り返し)”と称したのは、米Billboardソングチャートのように“一定週数以上のランクイン曲に制限して適用する”ことが背景にあるのだろう。