f5ve、1stアルバムは“なんでもアリ”のジャンルレスな作品に 直球の日本語表現で「ポジティブなエネルギーを届けたい」

f5veが5月5日、初のフルアルバム『SEQUENCE 01』をリリースした。昨年5月に正式デビューした彼女たちは、グラミー賞受賞プロデューサーのBloodPop®の全面的なバックアップにより、アグレッシブかつポップな楽曲を次々と発表。“東京発の異次元ドリームグループ”をコンセプトに日本カルチャーの良さを伝えるそのサウンドメイクは、近未来的でありながら不思議と懐かしさも感じられる。「Firetruck」「UFO」「Magic Clock」などのシングル曲と新たにレコーディングしたナンバーで構成される今回のアルバムで早くもオンリーワンの輝きを手に入れたf5veだが、次に目指すのは海外進出だという。そうした状況もあるのだろう、今回のインタビューではどのメンバーも夢と希望に満ちあふれた表情が印象に残った。(まつもとたくお)
『SEQUENCE 01』でわかるf5veの“これまで”と“これから”


——アルバムのタイトル『SEQUENCE 01』ですが、どのような意味が込められているのでしょうか。
KAEDE:“sequence”は直訳すると「連続」。f5veの物語がここから始まり、プロとしてのキャリアが幾重にも重なっていくといった決意表明をタイトルにしました。
——完成度が高い作品だと思いました。これ以上の内容を次のアルバムで見せるのは大変そうですね。
全員:まったく心配ありません。大丈夫です!
KAEDE:その点は自信がありますね。私たちは常に自分たちの表現に自信満々です。
——過去のシングル曲とは異なるテイストの楽曲も多く収められているのが興味深かったです。
SAYAKA:そうですね。リードトラックとなる「Sugar Free Venom feat.Kesha」では、メンバー全員がラップに挑戦しているのですが、今までのシングルとは違う雰囲気に仕上がっていて、良い意味でファンの期待を裏切るのではないでしょうか。
——しかもf5veの“これまで”と“これから”が分かるような内容になっていますよね。
RUI:「Firetruck」とか「Lettuce」といったシングル曲はロサンゼルスのスタジオでレコーディングしたんですが、当時はBloodPop®をはじめ、アメリカの制作スタッフとは仕事を始めたばかり。これらの曲を聴くと、一つひとつをドキドキしながらやっていたことを思い出します。新曲はすべてBloodPop®とともに1週間くらいスタジオにこもってレコーディングしました。『SEQUENCE 01』はトータルで2年、もしくはそれ以上かけて完成した作品なので、ようやくCDという形で出せるのが本当に嬉しくて……。何回聴いてもまだ信じられません。



——新曲に関しては試行錯誤を繰り返したと聞いています。
MIYUU:はい。すべて違ったタイプのサウンドだったので、それぞれの楽曲に合わせたキャラクターを作るのにかなり苦労しました。振り返ってみると、新曲のレコーディングは自分と戦った1週間だったと言えますね。
「Sugar Free Venom feat.Kesha」レコーディングでの苦労
——それでは今回のアルバムのために制作した新しい曲について詳しく教えてください。まずは「Initiate Sequence 01」。足音やアナウンスやラジオの周波数を合わせる音など、たくさんの効果音(SE)で構成された短い作品です。
RUI:これは私たちが今まで出してきた楽曲を連想させるSEなんです。“この音は「UFO」の飛行を表現しているのかも、電車内のアナウンスは「Underground」かな?”といった風に、クイズに答えるように聴いてもらえると嬉しいですね。
——現時点での最新シングル「Magic Clock」も収められていますが、この曲もアルバムの完成度を高める上でかなり貢献しているのではないでしょうか?
RURI:明るくてポップなトラックとキャッチーなメロディラインが特徴的ですし、メンバーたちが時間を自由自在に操る歌詞もインパクトがありますよね。結果的にJ-POPらしいサウンドになったんじゃないかなと思っています。
KAEDE:SNSでは、「2000年代初頭のK-POPみたいだ」というコメントも多かったんですよ。聴く人によって印象が異なる楽曲なんだって実感しました。
——先ほどSAYAKAさんが「Sugar Free Venom feat.Kesha」について「良い意味でファンの期待を裏切る」曲だとおっしゃっていましたが、意外性ではこれが際立っていますね。
RURI:Keshaさんが参加してくださったおかげで、より特別な作品になったと思います。
——歌い方も従来のスタイルとは違っていると思いました。マスターするのは大変でしたか?
RURI:そうですね、特に英語の発音で苦労しましたね。さらにレコーディングのときはクラブにいるクールな自分を想像しながら声を作ったんです。
——「Television」も同じくラップがメインですが、こちらは脱力系の歌い方が印象に残る仕上がりになっていますね。
MIYUU:この曲はとにかく難しかったです。なんて言ったらいいのか、ほぼ歌っていない感じですよね(笑)。メロディそのものは複雑じゃないのに、日本語のフレーズを自分のものにするのがとにかく大変でした。「Television」ってデモの段階ではすべて英語だったんですよ。でもBloodPop®のアイデアで、最終バージョンは英語と日本語をミックスした歌詞になりました。私的にはデモをたくさん聴いていたせいで、日本語が挿入された歌詞に苦戦しました。あとはおっしゃるとおり、脱力系で、ささやく感じのウィスパーボイスのような、ほぼ声が出ていないくらい(笑)。レコーディングは大変でしたが、結果的にそれがジャストフィットしたというか、こういう歌い方だからこそ独自性が出たんじゃないかなって思っています。
ストレートな日本語表現がf5ve流
——「Bow Chika Wow Wow」ですが、この曲も日本語のフレーズが変わっていて他にはないサウンドになっていますよね。みなさんに以前インタビューしたときに「BloodPop®から“日本語は日本語っぽく、英語も日本人らしい発音で歌ってほしい”と要望があった」とのコメントがありましたが、「Bow Chika Wow Wow」はそうした方向性を特に強く感じました。
RUI:日本語の歌詞は、Emyliさんという方が、BloodPop®の考えていることを理解して書いてくださっているんです。しかも私たちが歌っても無理がない、きちんとした日本語を書いてくださるので本当にありがたく思っています。不思議な言い回しもいくつか入っているんですが、そこに私たちのグループらしさが感じられるんですよね。
KAEDE:私たちのオリジナル曲は日本語の表現が“直球”なんです。J-POPって情景や気持ちを比喩したり、詩的に表現したりするのが特に良いところじゃないですか。けれども私たちの場合は、遠回しに「素敵ですね」みたいなことを言わずにストレートに「素敵!」と言うんです。困っているなら本当に困っているとそのまま伝える、みたいな。そういう表現の仕方を最大限に生かした楽曲だと思います。とはいえ、直球ではあるものの、そこからいろんなものを連想できる、そういう面白さもある歌詞ですよね。
——「Jump」は歌い上げ系で、サウンド的には“直球のJ-POP”です。f5veのオリジナル曲としてはかなり意外性がありました。
MIYUU:確かにJ-POP寄りだと思います。この曲はBloodPop®がアルバムのレコーディングのために来日したときに作ったものなんです。「突然こういうメロディが思い浮かんだんだ」とデモを聴かせてくれて、メンバーの反応が良かったことから正式採用となりました。私たちの楽曲って、こういう流れで完成するケースが多いんですよ。彼が日本滞在中に思いついたアイデアをメンバーたちとのディスカッションを経て磨き上げ、それをEmyliさんがメンバーの個性に合うように日本語に直す——。チームが一丸となって良い作品を生み出そうという意識、みんなで上を目指そうという気持ちが明確に表れた曲でもありますね。
——アルバムのラストに収められた「リア女 (Real Girl)」ですが、これはミクスチャーと言えばいいのか、いろんな要素がミックスされた曲ですよね。この“ごった煮”感がf5veらしいと思いました。
RURI:ロックっぽくもあり、王道のJ-POP風でもある、私たちならではの1曲です。このアルバムの中では1、2を争うほど歌うのが難しくて、とにかく声の強弱の付け方が大変でした。低いところはしっかり低く、サビのキーは高い。メンバー全員で「ちゃんとできてるかな?」と確認しあいながらレコーディングしたんです。
SAYAKA:BPMが速かったのも苦労した要因のひとつでしたね。