PassCode「やめるっていう選択肢はなかった」 コロナ禍での体制変更、さらなる高みを目指す覚悟

PassCodeが、約4年半ぶりのフルアルバム『INSIGNIA』をリリースした。同作には「Freely」「Clouds Across The Moon」「WILLSHINE」「SKILLAWAKE」など、2021年に有馬えみりが加入して新体制となって以降の楽曲に加えて、リード曲「DESTINEX」、「MIRAGE WALKER」「VIRIVIRI」「One Time Only」「A certain Motor-Heart is not working right!」「Echoes」といった新曲も収録。PassCodeの約4年間の足跡と今が刻まれた一枚に仕上がっている。
2025年11月にアリーナ公演『PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 “DESTINEX”』を控えるPassCode。同公演はこの4年で強靭な絆を築いてきたグループにとって、新たな挑戦といえる。インタビューでは、『INSIGNIA』の制作エピソードはもちろん、新体制以降の歩み、10年以上のキャリアを積んできたグループの現在地を語ってもらった。(編集部)
「自分の人生において一番プライオリティが高いのがPassCodeだけ」(南)

ーー有馬さんが加わった現体制になってから、まもなく4年になろうとしています。ちょうどコロナ禍でのメンバーチェンジということもあり、外から見ていると激動の期間だったのかなという印象がありますが、実際のところいかがですか?
南菜生(以下、南):えみちゃん(有馬)が入ってくれてから4年ぐらいってことは、前のアルバム『STRIVE』(2021年12月発売)からも4年半経ってるってことですものね。でも、一生懸命駆け抜けている間に4年も経っていたので、私的には「そんなに経った?」みたいな感覚のほうが強くて。
高嶋楓(以下、高嶋):コロナ禍に入ったばかりの頃はライブの数が一気に減ったけど、2022年2月には初武道館もあったし、それ以降は少しずつライブの本数も増えていって。それまで当たり前みたいな感覚だったライブに対しても、1本1本に対するありがたみがどんどん増していったし、再びお客さんに近い距離でライブができるようになってきたことで「やっとか」という思いもあるし、それと同時にここまで一瞬だったなという気もしています。
南:PassCodeだけじゃなくてほかのアーティストさんも一緒だと思うんですけど、やっぱりキツイ時期でしたものね。特にコロナ禍に入って最初の半年くらいはすごくしんどくて、今思えばあの頃は永遠に感じるぐらいの時間だったかもしれない。でも、少しずつライブができるようになってからは、私たちもお客さんもお互いに新しいライブのやり方を構築していく中で、ここまでつなぐことができた。そう考えると、ここまで続いていること自体がすごいことだと思います。
大上陽奈子(以下、大上):私もここまでもすごく早かったなと思っていて。今年11月に横浜BUNTAIでのアリーナライブを開催すると発表したときも「(武道館以来)約3年9カ月ぶりのアリーナライブです」という打ち出し方をしていて、それに対しても「え、嘘や!」って驚いたくらいですから。それこそ、一昨年行ったUSツアーも、今思い返すと去年ぐらいの話だと思っていたし、最近だと思っていたことが全部数年前だったと気付くと、知らん間に時ってすぎていくんだなと思いました。でも、そう感じるってことは、それだけここ数年を忙しく過ごしてきたということでもありますもんね。
有馬えみり(以下、有馬):私は加入してからしばらく、「まだ○カ月くらいなんだね。そんな感じせんね」みたいな話をよくしていたんですけど、気付いたらもうすぐ4年みたいなことになっていて。
南:それこそ最初はめっちゃ人見知りで、全然話さなくてただニコニコしていたんですけど、最近なんて楽屋で一番お話してくれるし。
有馬:オタク特有の早口でね(笑)。
ーー思えば、2022年2月の武道館公演って、有馬さん加入から半年経つか経たないかというタイミングだったんですよね。でも、当日のステージを観た限りでは「すでに1、2年一緒に活動してますけど?」みたいな安心感が強くて。
有馬:よく言われます(笑)。
ーーそう考えると、すごくいい形で結束を強めながらここまでたどり着けたんですね。その一方で、このコロナ禍を乗り切れずに歩みを止めたりするバンドやアイドルグループも少なくありませんでしたし、ここ最近も東京女子流など10年以上活動してきたグループが解散を発表したばかり。PassCodeとしての活動も気付けば10年を超え、南さんや高嶋さんも加入から10年以上経過しています。
南:陽奈子も10年目だしね。確かに、周りにもコロナ禍を機に解散したり活動休止したりしたバンドやグループもたくさんいたし、特に女の子のグループで長く続けるとなるといろんな課題が出てくるのもあるし。でも、たまにひょこっと戻ってきてくれる人たちもいて、それが私的には希望になっているんです。コロナ禍の頃は音楽業界が全体的に暗い雰囲気で、辞めてしまった人から仲良くするのが苦しいと言われることもあったけれど、状況とタイミングさえ許せば戻ればいいんやという選択肢が増えたことで、私自身もいろいろ気持ちが軽くなって。PassCodeは続けることを選んだけど、この選択をしたからそういう再会の場面にも立ち会えている。そういう未来があるとは思っていなかったので、私はこの選択をしてよかったなと思っています。
ーーなぜPassCodeを続けることを諦めなかったんでしょう。
大上:私はコロナ禍においては、やめるっていう選択肢はなかったかもしれない。確かにコロナの最中にメンバーチェンジはあったけど、その都度できることをスタッフと相談しながらやれてこられたから、やめないといけないのかなという考えは一切なかったかな。
高嶋:確かに、ライブもまったくできなくなったタイミングは「この先どうなるんだろう?」と不安になったけど、いろんなバンドの人たちが配信ライブを徐々に始めたりするのを見て、「まだまだやれるかも」と希望を持てたので、私も諦めるという選択肢には至らなかったです。
有馬:私の場合は、昔からずっとピアノを習っていたりバンドをやっていたから、前のグループが活動休止したあとも普通に音楽を続けていましたし。私のお父さんがもともとミュージシャンで、普通に昼は仕事して夜に帰宅してからギターを弾いている姿を見て育ってきたのもあるから、そもそも音楽を「やめる」っていう感覚が自分の中にはなかったんです。
ーー音楽自体が衣食住と同じくらい、日常において普通に存在しているものだったと。
有馬:そう。だからPassCodeから声がかかったときも、「諦めないぞ」という気持ちで入ったというよりも、また表舞台に立つという選択を取ったに過ぎないんです。
南:私はコロナ禍以前の、ライブでインプットしてライブでアウトプットする生活をいきなり奪われてしまって、それが苦しかったくらいで、やめるとか諦めるってことは考えなかったかな。メンバーチェンジのときもすぐに続ける方法を考えたし。外から見ている人には、えみちゃんの加入までが異例のスピードだったと思うんですよ。でも、もともと加入が決まっていたわけじゃなくて、続けるなら新メンバーが必要だよねという話を高嶋と大上とはずっとしていて。結局、自分の人生において一番プライオリティが高いのがPassCodeだけなんです。
ーーでは、そんなPassCodeにとって今もっとも必要なものは?
南:今足りてないなと思うのは、グループとして上っていくという感覚かな。アイドルファンの方って、そういう上昇する過程を応援するのが好きだと思うんです。PassCodeはもう10数年活動しているし、「PassCodeってこうだよね」というのもある程度確立されているから、「PassCodeを○○の舞台に、俺らが連れていく!」みたいな楽しみ方も薄れているのかなと。だから、今回みたいに横浜BUNTAIという新たな課題を用意して、PassCodeはまだ挑戦し続けるグループなんだということを再提示した。そういう目に見えた新しい目標をファンのみんなと一緒に目指すことで、上昇していく瞬間のキラキラを再び手に入れられるんじゃないかと思っています。