『マウンテンドクター』特典映像は一級のドキュメンタリー 杉野遥亮が涙する舞台裏も

『マウンテンドクター』(カンテレ・フジテレビ系)のBlu-ray&DVD-BOXが3月7日に発売される。北アルプスを舞台に杉野遥亮が山岳医の宮本歩を演じるオリジナル作品は、2024年7月から9月にかけて放送され、圧倒的なスケールの映像が感動を呼んだ。
山をテーマにした作品は多くあるが、その中でも山岳医療にスポットを当てたのが本作である。山は危険と隣り合わせだ。険しい地形と厳しい気候条件は、十分に計画しても、怪我や事故が発生すればとたんに行動不能におちいる。想定外のリスクがつきまとうのが登山で、常に最悪の事態を考えて行動しなくてはならない。
山に医療従事者がいることは、登山者にとって最大の安心要因となる。日本の主要山岳では夏山シーズンを中心に診療所が開設されているが、ほとんどはボランティアによるもの。専門家が常駐するなら心強いし、そこには救われる命があるだろう。登山人口が増加し、海外からも多くの登山客が訪れる昨今、『マウンテンドクター』はタイムリーな作品だった。
ドラマは雄大な北アルプスの風景ではじまる。続いて、カメラは松本駅に降り立つ歩をとらえる。信濃総合病院に勤務することになった歩は、山岳診療に携わり、現実の厳しさに直面する。それは山の厳しさであり、歩自身の過去の経験も影響していた。
本作は徹底してリアリティを追求している。その一つが長野での現地ロケだ。市街地や病院の建物は実在のもので、山々を背景に澄み切った空気が映像から伝わってくる。ただし、それらはほんの序章にすぎない。『マウンテンドクター』では、全話にわたって山でのロケが行われた。それらは山好きなら誰もが知るロケーション。日本百名山に選定された美ヶ原や白馬岳に連なる山々で撮影が敢行された。
特典の唐松岳登山映像からは、山での撮影の様子を知ることができる。収録されているのは、第1話ラストで国際山岳医となった歩が山に帰還するシーン。撮影されたのは標高2,696メートルの北アルプス唐松岳である。ドラマ本編だと時間にして40秒弱だが、このシーンを撮るため、杉野とスタッフは撮影機材を携えて山頂を目指した。リフト終点の八方池山荘から歩くこと約4時間。残雪を踏みしめロープを握りながら、ザックを背負って一歩ずつ足を運ぶ。たどり着いた頂上は雲が立ち込め、しばらく待機となる。大自然を相手にした撮影の困難さが伝わってきた。
いつでも撮影できるように準備していた一行は、晴れ間がのぞいた瞬間、絶好のチャンスを逃すまいと、すぐさま本番体制に入る。息のそろったチームワークとそれに応える主演俳優の集中力によって、ドローンの空撮を含む完成版の映像がカメラに収められた。変わりやすい山の天候は、撮り終えるとふたたび濃い雲に覆われる。天候を味方につけた一部始終は、本作の成り立ちを知る上で欠かせない一級のドキュメンタリーとなっている。