『あなたを奪ったその日から』偽装母娘の同居生活が始まる 対比を通して浮かび上がる主題

『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)第2話では、母と娘に偽装した2人の同居生活が始まった(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
萌子(倉田瑛茉)を家に連れ帰った紘海(北川景子)は、自分を「お母さん」と呼ぶように言う。紘海の中で眠っていた“母なるもの”が目覚めたようだった。
その頃、結城家では警察が事情聴取をしていた。現場付近で不審な女性を見かけたという家庭教師の玖村(阿部亮平)の証言を聞いて、結城(大森南朋)は取り乱す。結城は元妻の江身子(鶴田真由)を訪れるが、萌子の足どりはわからなかった。
客観的に見れば、女児の誘拐事件である。それを今作は加害者と被害者の両面から並行して描いていく。紘海は何かしたかったわけではない。萌子を殺せずに持て余したものの、自分を母親と信じて頼ってくる女児を見捨てることができない。保育士の紘海は子どもと接し慣れているはずなのに、萌子に対してどうすべきかわからない。紘海自身が揺らいでいることは、ですます調で話しかける口ぶりからも伝わってきた。
結城は不審な女性を探して各所を訪ね歩く。娘の安否を気づかう様子から、理想的な父親に見える。それは普段の結城からは考えられない姿で、萌子の眼に映る結城は背中だけの空疎なイメージだった。
さまざまな対比を通して、登場人物の関係性と作品のテーマが浮かび上がってくる。誘拐犯で加害者にあたる紘海は娘の命を奪われた被害者であり、被害者の父である結城は、紘海の娘の灯(石原朱馬)が命を失うきっかけとなった事故を起こした加害者だ。紘海は萌子を奪ったことで、また、結城は娘をさらわれたことで親の情が発現する。結城は誘拐犯が紘海であることを知らないが、紘海は萌子が結城の娘であると知っている。2人を結びつけているのは、過去と現在の事件を通して絡み合う因果の糸だ。