道枝駿佑が『キャスター』で体現する“青さ”が眩しい　積み上げてきたキャリアを振り返る

　阿部寛が主演を務める日曜劇場『キャスター』（TBS系）で、新米AD・本橋悠介を演じている道枝駿佑。回を重ねるごとに、道枝の演技に注目が集まっている。

　本作は民放テレビ局JBNの報道番組『ニュースゲート』を舞台に、視聴率低迷の打開策として公共放送から引き抜かれた、進藤壮一（阿部寛）が新キャスターに就任するところから始まる。ベテラン勢を中心に個性豊かなキャラクターが揃う中で、奮闘する入社2年目の本橋。道枝はそんな若手らしい瑞々しい存在感を発揮しながら演じている。

　中でも、iL細胞をテーマに、大学の研究員・篠宮楓役でのんが出演したことでも注目を集めた第3話では本橋の奮闘にフォーカスされた。序盤では大学時代の先輩・栗林准教授（井之脇海）と再会し、篠宮の独占インタビューを獲得。ニコニコと笑顔を浮かべて撮影を行っていたのだが、物語が進むにつれて本橋の表情が曇っていく。

　進藤が提出したVTRによって事態は思わぬ方向へ。本橋が軌道修正するべく出したカンペもスルー。番組終了後に、本橋は声を荒げて進藤に噛みついた。結果的に進藤から「ジャーナリスト気取りのADくん」と嫌味を言われてしまうのだが、独自取材を重ねた一枚上手の進藤を前に、栗林を疑うことなくまっすぐ信じきっていた本橋の“青さ”のようなものが浮き彫りになる場面だった。

　また、論文が取り下げになったあと、篠宮を直撃した場面で、本橋が篠宮を追いかけて「僕は本当のことが知りたいだけなんです」「栗林さんがいた研究室で不正なんかが行われるはずはありません！」と思いを伝える。進藤の指摘にもあったように、ジャーナリストとしては足りていない部分があるかもしれないが、本橋の言動、その瞳から伝わってくるのは熱く、まっすぐな人柄だ。

　特に学生時代に世話になった栗林が関わっているということもあり、感情が先走ってしまう場面もあるが、進藤との対話を通して“報道マン”としての自覚が芽生えていく過程は胸を打つものがあった。俳優としての初々しさではなく、これまでドラマや映画、舞台とキャリアを積み、演じる役柄を理解した上での本橋の初々しさに説得力をもたらした。

　また、道枝が言葉ではなく表情で心情を表現する場面も多い。SNSでも話題になっていたが、第6話ではNPO法人を巡る疑惑に迫る崎久保華（永野芽郁）から「誰にも言わずに、つきあって」と意味ありげに誘われる場面があった。そこで本橋は無言ではあったものの少し見開いた目とまばたき、そして口をわずかに尖らせるように動かし、下唇を噛みながら口を真一文字にして、本橋のごくごく淡い期待を表現してみせた。いざ同行してみるとNPO法人の事務所の調査だったのだが……。本橋は「まぁ……こういうことですよねぇ……」とつぶやき、淡い気持ちが打ち砕かれた様子が伝わってきた。そんな本橋の表情から伝わってくる心の動きも本作の面白さにつながっている。