『るろうに剣心』漫画×アニメ×実写で成功した稀有な名作 “折れた逆刃刀”から紐解く

毎話がクライマックス! そんな感覚を味わえるTVアニメが、2024年10月から放送が始まった『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』だ。『週刊少年ジャンプ』で連載された和月伸宏の漫画を原作に、第一期となるテレビアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 序幕東京』が2023年に放送。これに続く第二期は、人斬り抜刀斎こと緋村剣心にとって最大の敵となる志々雄真実とその一党を相手にした戦いが続いて楽しませてくれる。佐藤健が剣心を演じた実写版から作品に触れた人が観ても、改めて興奮の連続になったことは確実だ。
腰に差した刀の鞘に左手を添え、右手を束に近づけて剣心が身構える。相対するのはあどけない顔をした少年で、剣心と同じように腰の刀に手を添え、笑顔を浮かべて剣心に視線を送る。第二十九話「再び京都へ」のこのシーンに、初めて『るろうに剣心』に接したファンは何が始まるのかと固唾を呑み、1996年に放送された版のテレビTVアニメを観ていた人は名場面再登場の興奮に震えたことだろう。
何しろ1996年版では、第三十七幕「衝撃!折れた逆刃刀・天剣の宗次郎対剣心」として放送され、シリーズ最高の視聴率16.0%を獲得したエピソード。志々雄真実の配下でとてつもない剣の腕を持ち、大久保利通の暗殺を易々とやってのけた瀬田宗次郎が、物語にあって最強であるべき主人公の剣心を相手に、どのような戦いをするのかに誰もが目を奪われた。
結果は、わずかに一合の斬り合いで剣心が使う逆刃刀が折られるという驚きの展開。過去に幾度も苦境に陥ってきた剣心とはいえ、ただの少年にしか見えない宗次郎に行く手を阻まれるという状況が、その後に幕を開ける壮絶な戦いを予感させ、一層の期待を誘ったことが高視聴率に繋がった。
そのエピソードが、新作でもいよいよ登場ということで、「再び京都へ」にも多くの注目が集まった。評判は上々。BGMがまったく鳴らない状況で、足に力が入って足袋が畳とこすれる音が鳴り、剣心と宗次郎がそれぞれに刀の鯉口を切る音が漏れ、そして一気に近寄り斬り合って、刀がぶつかり合う重い金属音が響き渡るという静から動への変化に、誰もが目を奪われたようだ。
同じシーンで1996年版では、戦いを盛り上げるBGMが鳴り、刀がぶつかり合った瞬間にピキーンといった音が響いて、スピーディーな戦いが繰り広げられていることを感じさせた。それはそれで感情に響いてくる演出だったが、リアル感という意味では「再び京都へ」の方が強いと感じた人も少なくないかもしれない。この戦いに限らず、新作のテレビアニメは剣戟などのアクションで、外連味とは反対の剛健さで全体をまとめている感じがある。それが観る人を明治初期の世界へと引きずり込む。