『御上先生』制作陣が伝えたい“考えて”のメッセージ 神崎役に奥平大兼を抜擢した理由も

松坂桃李主演のTBS系日曜劇場『御上先生』は、「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚の御上孝(松坂桃李)が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かう、オリジナルの学園ドラマ。
第1話の平均世帯視聴率は12.2%・個人視聴率は7.5%。好発進を切り、飯田和孝プロデューサーは「無事に放送できて良かった」と胸をなでおろした。ただし「トレンドがイコール反響かどうかは、僕もちょっとわからないです。そういったことも含めて、それが真実かどうかというのが作品のテーマだったりするので、トレンドに入ったことが観てくださった人の感想の全てではないことは冷静に捉えています」とコメント。それでも「やろうとしたことやメッセージはしっかり伝わったし、企画した意図が届けられて、想像した以上のリアクションをいただけた感じはあります」と手応えを感じているようだ。

第1話ラストで主題歌のONE OK ROCK「Puppets Can't Control You」も解禁。飯田プロデューサーによると、オファーのきっかけは同バンドの『18祭(フェス)』がきっかけだったそう。「以前、佐藤健さんとお仕事をした時に『ワンオクすごくいいですよ』と聞いて、聴き始めて。その後、コロナ禍でたまたま『18祭』の映像を観ていて、すごく生き生きとしている18歳の人たちの姿を目にしたんです。心の叫びじゃないけど、彼らと共鳴し合うワンオクの皆さんがいて。それでドラマを作ろうと思ったのがきっかけです。世界を見据えている方たちですが、思いをぶつけて、ご賛同いただけました」と経緯を語った。
さらに「ボーカルのTakaさんが18歳の人に向けた『君たちはもう子供じゃない』という言葉をティザーで引用させてもらっているんですけど、それと『いろんなことがあるけど、自分自身に嘘をつかないことを大切にしている』という言葉もすごく残っていて。日本人は本心を素直に言えなかったり、言わせない空気も世の中にあるし、この社会で生きていく上で必要かもしれないけど、時には自分の感情を伝えることが大事だったりするので、それをもう少し発展させてドラマに入れ込めたらと思っています。ご賛同いただけて、主題歌を提供していただけたことで、普段ドラマを観ない方や若い世代も観てくれたと思います」と反響を喜んだ。
飯田プロデューサーは「学園ドラマが時代を切り取ってきた」と語る。「今回、(本作の脚本を手がける)詩森(ろば)さんとお仕事をするにあたって、日曜劇場で学園ドラマというと『ドラゴン桜』(TBS系)という異例のドラマを除いて、あまりない中で、日曜劇場を観る視聴者も意識した」とのこと。「“小が大を食う”ような、制度や世の中の理不尽を打ち砕いていく主人公にモチベーションを感じる方が多いと感じていた」。その結果、官僚で教師という主人公が生まれた。
現在の教育制度に対しては「教育制度改革でセンター試験が変わって、より記述が多くなると言われていたのが、結局変わらなかったのは、採点が難しくなるからと聞いて、学校や子供たちは国や大人によって振り回されていると感じました。そういう大人たちや社会に一石を投じるものを作れないかと考えた時に、制度を作っている文科省と学校を結びつけられないかと考えて、公立高校には官僚派遣制度があると詩森さんから伺ったんですね。私立では行われていないので、最後のテロップにもそのことを入れています」と、今作に問題意識を織り込んだ。

生徒役の顔ぶれも話題に。3年2組の生徒役は全員オーディションで選ばれた。「基本的に演技力を軸に据えていました。演技は自分を出すことの反面、引くことも必要。教室のシーンがどう見えるかについて、生徒役も意見を言い合っています。ドラマのセオリーとしては主人公のシーンを多く入れなきゃいけないと思うんですけど、今作はそういう作り方をしていなくて、生徒たちで見せることに腹をくくっている部分もあります」と、個々が調和した画づくりを目指していると話した。
また「実年齢が18歳より上の役者さんが多いというコメントも見たりしましたが、若い子を売り出すために作っているわけではありません」ときっぱり。「僕らがこういうドラマにしたいという思いが各プロダクションさんに伝わったと思います。視聴者の方の中には、あの人はいないのかと感じる人もいると思うんですけど、それら一切を度外視して、賛同してくれた方、オーディションに参加してくれた方の中から選ぶことに意義があると思いました。そのあたりも既存のシステムを壊している部分」と今作の挑戦を明かした。