『御上先生』生徒の気づきもたらす松坂桃李の言葉 堀田真由が担う根源的な“悪”への視点

『御上先生』(TBS系)第2話では、バタフライエフェクトの一端が明かされた(この記事には第2話本編の内容が含まれます)。
校内新聞で文科省での不祥事を公表された御上(松坂桃李)に3年2組の生徒たちは冷ややかな反応。そんな中で、心にかかった霧が晴れないのが神崎(奥平大兼)だった。神崎はコンビニで働く冴島(常盤貴子)を訪ねる。冴島は神崎が書いた記事で同僚教師との不倫を暴露されて退職した。話がしたいという神崎に冴島が返した言葉は「あなたのせいじゃない」という予想外のものだった。
着任早々、生徒たちに向かって既存のエリート観をぶったぎった御上。真のエリートの意義をめぐって展開すると思われた物語は、予想に反して一人ひとりと向き合う方向へ進んでいく。第1話で御上が神崎に語りかけた理由は、単に報道部の部長で“要注意人物”、理事長の古代(北村一輝)が言うように「反骨精神のある天才」だからではない。そこに込められた意味はポリティカルな位相に結びつくもので、それを知って御上はあえてパーソナルな呼びかけを行ったと考えられる。
官僚で教師というキャラクターについて、本作の飯田和孝プロデューサーは「時代を映す学園ドラマで、制度や世の中の理不尽を打ち砕く主人公(趣意)」として構想したと語っている(『御上先生』制作陣が伝えたい“考えて”のメッセージ 神崎役に奥平大兼を抜擢した理由も)。二つの顔を持つことの意味は、ドラマの進展とともに明らかになると予想されるが、第2話では生徒と教師それぞれに語りかけることで表現された。生徒は神崎、教師は是枝(吉岡里帆)である。スローロリスですらない自分は何を見ていたのか。御上という強烈な光で照射された是枝の自省は重みがあり、教育は生徒だけを育てるものではないことを示唆していた。
第2話のサブタイトルは「-awareness-」だった。第1話が始まりの前の破壊(-destruction-)だったとして、個々の“気づき”あるいは“目覚め”であり、作中の現在で蝶の最初の羽ばたきを第2話と理解することが可能だ。国家公務員総合職の試験会場で起きた殺人事件をめぐる教室での意見交換は、生徒たちの眠っていた意識が目を覚ます瞬間をとらえていた。「個人的なことは政治的なこと」という今作の“Personal is political.”のテーマを表すものとして「ハゲワシと少女」の写真は象徴的である。餓死寸前の少女に対して傍観者だった写真家を世間は非難した。では、シャッターを押すべきではなかったのか。神崎はそれを否定する。