『ガンニバル』完結直前で複数勢力がぶつかり合う混戦へ 供花村に根深く染み込んだ“呪い”

『ガンニバル』複数勢力がぶつかり合う混戦へ

 4月16日に配信がスタートした、ディズニープラス スター オリジナルシリーズ『ガンニバル』シーズン2の第7話は、最終話前――すなわち、このドラマが完結を迎える直前のエピソードとなる。第5話・第6話と供花村と後藤家の過去について紐解かれ、主人公である大悟(柳楽優弥)の出番は限りなく少なかったのだが、本格的に現代パートに戻った今回も、思いのほか登場シーンは多くない。もはやこのドラマは、大悟の物語でもなければ恵介(笠松将)をはじめとした後藤家の物語でもない。供花村全体に根深く染み込んだ“呪い”をめぐる、かなり複雑に入り組んだ物語となりつつある。

 それを示すように、物語は“三つ巴”どころではない複数の勢力がぶつかり合う混戦へと突き進んでいく。“あの人”に連れ去られてしまったましろ(志水心音)を救出するために手を組み、暗い山のなかを進みながら祭壇のある洞窟を目指す大悟と恵介。そんな恵介を裏切り者とみなし、追いかける岩男(吉原光夫)を筆頭とした後藤家の男たち。後藤家を追う警官隊に、祭りの夜にとうとう後藤家に反旗を翻すことを決めた村人たちが加わる。その“村人側”のキーパーソンとなりそうなのが、冒頭に描かれた河口尊(岩瀬亮)という男であろう。

 ブレスレット型のサイリウムをつけ、ヨガに勤しんでいる尊。彼はかつて後藤家に娘を奪われた過去があるようで、その娘が生きていれば中学生になるという(その娘の名は、おそらく和可菜というようだ)。後藤家に終わりが近付いていると聞きつけた彼が「もし子どもを奪われなかったら」と言うと、一緒に暮らしている両親は、彼の娘を後藤家に「捧げた」のだと口走る。「そのおかげでいま生活ができている」と口にする両親を殺害した尊は、自らの髪をバリカンで刈りながら、この村を変えることを心に誓う。

 原作コミックではメインストーリーの完結後に発表された読み切り『ガンニバル B話』の主人公として登場していた彼の視点が(そのエピソードとは異なるかたちで)挿し込まれることによって、蓄積されてきた村人たちの後藤家に対する鬱憤が本格的に爆発するのだと示唆されていると考えてもいいだろう。それはまさしく、長年にわたって暗黙的に保たれてきた供花村の均衡――いわば呪いを打ち崩すための大きな足掛かりともいえる。

 そうした兆しのようなものが、別の登場人物の視点からも暗喩的に示唆されている点は見逃せない。前回のラストで、有希(吉岡里帆)を病院へ送り届けるために車を走らせていた洋介(杉田雷麟)。真っ暗な夜道で待ち構えていた久露恵(山本奈衣瑠)を乗せて車を走らせるのだが、村の出口に差し掛かったところで思わぬ足止めを喰らってしまう。一度車から降りた洋介の前に現れたのは、後藤家のためなら手段を選ばない危険な理(中島歩)。理は洋介を裏切り者とみなし、容赦なく襲いかかってくるのだ。

 それを見ていた久露恵は、武器を手にして理に近付く。村から逃げ出したいと強く願う彼女は、理の性格を巧みに利用しながら油断させ、痛みを感じない彼を倒すための奇襲に打って出る。それは、致死性の高い農薬を塗りたくったナイフで彼を刺すという方法だ。外側からダメージを与えても効果がないのであれば、内側からやるしかない。ここでの理の存在は、そのまま“供花村の呪い”に置き換えることができるのではないだろうか。大悟というよそ者が何をしても微動だにしなかった“供花村の呪い”を本当に変えられるのは、村人たちしかいないということだ。

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