『ストリートファイター6』でファン急増!  “格ゲー”ブームが映像業界にもたらす余波

“格ゲー”ブームが映像業界にもたらす余波

 コロナ禍をきっかけとして、ここ数年日本のコンテンツ業界で「ゲーム」の存在感が強くなっている。とくに現在、熱を帯びているのが『ストリートファイター6』(以下、スト6)をはじめとした対戦型格闘ゲームだ。

東京ビッグサイトで行われた『EVO Japan 2025』

 5月9日から11日にかけて開催された格闘ゲームの祭典『EVO Japan 2025』は、まさに“格ゲー”ブームの盛り上がりを象徴するようなイベントだった。そしてその熱気はゲームだけに留まらず、アニメや映画の世界にも届き始めている。

『EVO Japan』は「EVO」(Evolution Championship Series)の日本大会。『スト6』を含む複数タイトルの大会が集結する格ゲーマーの祭典で、プロ・アマ問わず誰でもエントリーできるオープン形式が採用されている。

 ここ数年、参加者数が急増しており、2023年は約1,500人、2024年は約9,000人、そして今年は約1万人のプレイヤーが参戦した。さらに、来場者数は歴代最多となる3万人超を記録。YouTubeやTwitchで行われた生配信の同時接続者数は全体で10万人を超えるなど、その注目度の高さがうかがえる。

『EVO Japan 2025』の様子

 こうした「EVO」の盛り上がりに大きな影響を及ぼしたのが、2023年6月にリリースされた『スト6』。そもそも格闘ゲームは、複雑なコマンド入力が必要ということで初心者が参入しにくいジャンルだと見なされていた。しかし『スト6』はコマンド入力を簡略化した「モダン」という新たな操作方法を実装することで、多くの新規層が参入するきっかけを作り出した。

 また、格闘ゲームのビギナーだった配信者が続々と同作の実況を始めたことも、この流れを加速させたものと思われる。とくに注目したいのは、「CRカップ」などのストリーマーイベントの影響だ。同時接続者数が数十万人を記録するほどの熱狂が生まれていたが、その規模からして、自分ではほとんどプレイしたことがない観客も含まれていたはず。つまり格闘ゲームの試合が、スポーツ観戦のような“興行”として広く受け入れられたと言える。

 言い換えるとこれはある意味、格闘ゲームがゲーマーだけのものではなくなったということ。だとすると映画やアニメなどの世界にその熱が飛び火する可能性は、十分あるのではないだろうか。

TVアニメ『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』ティザーPV

 実際に格闘ゲームの流行と並行して、さまざまなメディアミックス展開が生じている。たとえば4月からは、人気格闘ゲーム『GUILTY GEAR』をTVアニメ化した『GUILTY GEAR STRIVE: DUAL RULERS』が放送中。年内には、お嬢様たちの格ゲーライフを描いた『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』のアニメ化も予定されている。

 さらにハリウッドでは、かつて公開された『ストリートファイター』(1994年)と『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』(2009年)に続き、新たな『ストリートファイター』実写映画化の企画が進行していることも報じられている。

 とはいえ格闘ゲームの映像化はここが到達点ではなく、この先さらなる盛り上がりを見せる可能性がある。というのも、そもそもこのジャンルは色々な面でアニメや映画と親和性が高いように思われるからだ。

リニア新幹線と同じ原理で浮遊するバイソン将軍『ストリートファイター』映画フル公開🎥

 たとえば格闘ゲームにおいては、「キャラクター同士の因縁」が設定の中心に組み込まれていることが多い。『ストリートファイター』シリーズでいえば“殺意の波動”をめぐってリュウと豪鬼の因縁が繰り広げられてきた一方、悪の総統・ベガに家族を殺されて復讐に燃えるジュリや春麗といったキャラクターも存在する。

 登場人物たちがただ戦闘するのではなく、強い感情に突き動かされているという設定は、映像化にうってつけ。原作の人間関係を下敷きにするだけで、骨太でドラマチックなストーリーを生み出せるはずだ。

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