野呂佳代、『神説教』ベテラン教師役でさらなる躍進 アイドル時代からのキャリアを辿る

「出演しているドラマにハズレなし」と呼ばれる名バイプレーヤーとなった野呂佳代。2024年の出演ドラマを振り返ってみると大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)と、特に人気を博したドラマばかり。
2025年には、『ホットスポット』(日本テレビ系)に出演し、登場シーンの少なさからは考えられないほどの存在感を残した。現在は、『なんで私が神説教』(日本テレビ系)で、教頭・新庄保(小手伸也)と不倫関係にある大口美幸を演じている。

AKB48の2期生としてデビューし、後にSDN48へ移籍と、女優を夢見ながらアイドルとしてキャリアをスタートさせた野呂。SDN48が実質解散となった後は、バラエティタレントとしての道を歩んできた。始めの仕事は地方のパチンコの番組への出演番組ばかりだったそうだが懸命に向き合ううち、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)や『ゴッドタン』(テレビ東京)の準レギュラーをゲット。『ゴッドタン』では、身の振り方に悩みつつも、まずはいま与えられているバラエティの仕事に向き合い、いじられ役を引き受けたことでバラエティタレントとしての評価もうなぎ登りになっていった。
バラエティに向き合ったことは、野呂の夢を叶える一助となった。野呂の俳優キャリアの転機となった『科捜研の女』(テレビ朝日系)への出演は、『ゴッドタン』がきっかけだったと多くのメディアで報じられている。与えられた仕事に向き合い、助言を素直に受け入れ、行動を変える。野呂は、そうしてゆっくりと幼い頃からの夢を形にしてきたのだ。
以降、徐々にドラマへの出演が増えていった野呂。『ナイトドクター』(フジテレビ系)や『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)などでも安定した演技力が評価されていたが、特に注目されたのは、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)の丸山美佐役だろう。主人公・近藤麻美(安藤サクラ)の中学の同級生である美佐は、実際に放送されたドラマ『花咲舞は黙ってない』(日本テレビ系)のヘアメイク(役)として麻美と再会。金髪、喫煙、足首のタトゥーなどの嗜好の変化、結婚したことを隠し続けるというツッコミどころもあり、くすっとした笑いを担っていた。美佐を演じたときの野呂の芝居は、“自然体”の一言に尽きる。どこにも力が入っておらず、ただそこで仕事をして生きている不思議なラフさが漂っていた。この演技力はバカリズム作品との相性が抜群だった。
一方で、表情や視線に意図を忍ばせる演技もできるのも魅力だ。『アンメット』では、麻酔科医の成増貴子を演じた。主人公・川内ミヤビ(杉咲花)たち脳外科医を明るくサポートする彼女の姿だけで野呂の芝居の強みが感じられたが、特に第10話の彼女の過去が明らかになる展開で見せた演技は素晴らしかった。記憶障害で妻を認識できなくなった患者を前に、亡くなった恋人との過去を告白するときのあっけらかんとした声色、三瓶(若葉竜也)から亡くなったとしても内側前頭前野で一緒にいると聞いたときのほのかな笑み、喜びを抱えながら、ガトーショコラを一つ買う表情と後ろ姿。セリフで雄弁に語らせない、視聴者を信用した演出に応える表情や声色、身体表現を見せたのだ。放送当時、このシーンの演出の素晴らしさと野呂の演技力に、SNSでは絶賛の声が上がった。俳優としての確かな実力を見せつけたシーンと言えるだろう。